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「ムジナの話」ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)

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ムジナの話 著者:ラフカディオ・ハーン(小泉八雲、1850-1904) 1904年『怪談KWAIDAN』より     トーキョーのアカサカ通りに坂道が一つあり、キイ・ノ・クニ・ザカと呼ばれている。これは「紀伊地方の坂」という意味だ。私は理由を知らないのだが、それは紀伊地方の坂と呼ばれているのだ。この坂の片側を見ると、古い堀がある。深く、とても幅が広くて、緑に覆われた高い土手がところどころで庭園につながっている。道の反対側には長くそびえ立った壁が伸びていて、その向こうに王族の宮殿がある。街灯とジンリキシャが登場する以前、この辺りは日が暮れてしまうと本当にさびしい場所だった。だから遅くなってしまった人達は何キロも迂回して歩いた。  紀伊国坂を一人で、日没後にのぼるくらいなら。  全ては一匹の「ムジナ」から始まっている。いつもそこを歩いていたのだ。  その狢を最後に見たのは、キョーバシの宿舎にいた年配の男性商人で、30年前に亡くなっている。これはその人の話で、話してくれたそのままである。  ある夜、遅くなっていたので、彼は急いで紀伊国坂を登っていた。すると、女性が堀の横にうずくまっていた。ただ一人で、つらそうに泣いていた。彼女、投身するつもりでは、と思って彼は立ち止まった。手助けをするとか、話しを聞くとか、自分にできることをしようと思ったのだ。細身で、優雅な女性に見えた。服装はきちんとしている。髪型は整っていて、良家の令嬢のようであった。 「お女中」彼は大きな声で呼びかけ、近づいていった「お女中!そんなに泣かないで・・・何があったのですか、何かお手伝いできることがあれば、ぜひそうさせてください」(彼は思ったことをそのまま言った。なぜなら彼は、非常に親身な人物だったからである)けれど彼女はうううと泣くのをやめなかった。その顔は彼からは見えない。長い袖の片方でさえぎられている。 「お女中」もう一度彼は、可能な限り紳士的に言った「とにかく、とにかく聞いてください!・・・ここは若いお嬢さんが夜にいるような場所ではありません!泣くのはやめましょう、お願いいたします!何でも良いですからわたくしにお手伝いできることがあれば、おっしゃってください」  彼女はゆっくりと立ち上がったが、背中を彼に向けて、相変わらずむうう、とかそぼそぼと、袖のかげで泣いている。彼は自分の手を、軽く彼女の肩に置...